2009/06/24

無題

フィクション。2発目。とにかくイメージを膨らませて読んで欲しい、何が見える。





今日も何事もなく、一日が過ぎると思っていた。
上から言われたとおりにデスクワークをこなし、子どものすやすや眠る横顔を見て、ぐっすりと床に就けるだろうと思った。そして、また同じ日々・・・。

しかしだ、床についたところで、僕は気が付いた。
僕はいつの間にか僕という物体ではなくなっていた。肉体は僕の身体という物体を離れ、その意味を失ってしまった。脳はなんとか動いているようだが、僕は頭という物体を探すことができずにいた。頭に触れることができないのである。脳も物体を失ってしまったのだろう。
でもなぜか、元の身体に戻りたいという気分にはならなかった。とくに以前の生活に嫌気が差していたわけでもないし、不満を感じていたわけでもないのに。
僕はいったいどうしてしまったのだろうか。自分はなんなのかということを誰かに問いかけたくなり、夢中で身体と思われる部分を揺すって、動かそうと試みたが、しかし、感覚として何も感じることができず、「-------、--------」と音だけが聞こえてきた。
-------、--------?はて、どうしたことだろうか。僕の身体と思われる部分には何か音の出るようなものが付いているのであろうか。また、身体と思われる部分を動かそうとしたが、音は生まれることなく、まったくと言っていいほど、静の状態を保っていた。
そこで初めて僕は、僕自身で動けないということに気付いた。
しばらく、無音の中で、小1時間ほどであろうか、じっとしていると、何かが近づいてくる足音が聞こえてきた。僕はその人?に気付いて欲しくて必死にまた、身体と思われる部分を動かそうとしたが、一向に静の状態で、動を感じることは出来ない。あー、このまま通り過ぎて行ってしまうのか・・・と思ったそのとき、僕の身体はまるで宇宙に放り出されたようにふわっと舞い上がり、人間でいうところの無重力に近い感覚を味わった。
「-------!」
また、あの音だ。
しかし、その状態は人間の時間でいうところの3秒として、保たれることなく、一瞬にして下の方へと吸い込まれていった(人間でいうところの地面へというべきだろうか)。そして、また「-------、--------」と音がした。僕の身体と思われる部分は何かに包まれているような温かいと思われる感覚を味わい、人間の小さな子どもと思われるものの笑い声が聞こえる。「・・・・、・・・・・・!」「・・・・・」何やら、母親と思われるものは不満気味である。僕は、一瞬脳と思われる部分を混乱させ、自分が何かということを必死に考えようとしたが、もうそんなことはどうでもいいことだということに気が付いた。僕は人間でいうところの“役割”を与えられた気がした。

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